表題「量子言語入門(量子力学の言語的解釈)」の大学院講義は,慶應義塾大学理工学部で15年間以上続けてきたが,最近は内容がかなり固定化(マンネリ化)してきたので,講義ノートを公開する時期に来ていると思った.また,大学院の講義とは言っても,
「量子言語」は 特殊なテーマではなくて,
量子言語は次の三つの側面を持つという主張なのだから,すなわち,
\begin{align*}
\mbox{
量子言語=
}
\begin{cases}
\mbox{
$\bullet$
量子力学の標準解釈}
\\
\qquad
\mbox{
(すなわち,コペンハーゲン解釈の真の姿)
}
\\
\mbox{$\bullet$
認識論哲学(特にデカルト=カント哲学)の到達点
}
\\
\mbox{
$\bullet$
未来の理論統計学
}
\end{cases}
\end{align*}
という主張なのだから,
一般の需要も期待できるという思いもある.
本書の主張は、 以下の図式であった。
- Figure 19.1 history of world-views
- 図1.1: 世界記述の発展史の中の量子言語の位置
大抵の物理学者が感じていることであるが,
$(A1):$ | 量子力学(のコペンハーゲン解釈)には形而上学的側面と実在的側面がある |
$(A2):$ |
二つの側面(形而上学的側面と実在的側面)は,分離してそれぞれ別の方向($⑤$
と
$⑩$)に発展する。
$⑤$の方向は発展途上で,いろいろな考えが量子物理学を発展させるであろう.しかし,「量子力学には,もう本当の問題はない」という立場も有力で,これは$⑩$の方向の発展を促し,この方向は,量子言語が最終到達点で,しかもこれが
である。 |
したがって,量子言語は次の三つの側面を持つ.
- 量子言語の三つの側面
$⑦:$ |
量子言語は、言語であって、物理学ではない。
したがって、物理的問題が消去されてしまったことで、物理的な面白さも消去されたとしても、
そのパワーは本書で見たとおりである。
また、繰り返し喚起したことであるが、
|
$⑧:$ |
したがって、量子言語を使う際に、二元論的観念論の哲学はかなり役に立つ。
その理由は、
それにしても、「⑧$\to$⑩」が無かったとしたら、
という現代的総括を甘受せざるを得ないだろう。 |
$⑨:$ |
確率・統計学の基本精神は「確率空間は一つだけ(コルモゴロフの拡張定理)」で、
この精神は量子言語に引き継がれなければならない。
なぜならば、(コルモガルフの)確率論は、次の呪文から始まる形而上学だからである。
と主張する。 つまり、信じられないことであるが、
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